Ecology Information
不便な山の復権 隊長 大蔵喜福

ケモノ道を行くと、元気な森に出会った。低山でも魅力いっぱい

バリエーションルートなら登山道はない。その分スキルと装備がいる

 このところ中高年の登山ブームは少し落ち着いた感があるが、どうも慣れっこになっているだけか、百名山ともなると頂上に近付くにつれ、沸いたように登山者が溢れる。そういった山は、どうしても登山道の荒廃が目立つ。特定な山に集中する入山者による登山道の拡張、崩壊と生態系に及ぼす被害、いわゆるオーバーユースである。改善されつつあるとはいえゴミの問題。入山者の排泄物処理、他にも多くの生態系に及ぼす被害など多くを抱えている。まず交通アクセスの見直しが大切、とはいっても交通規制とともに入山者数の抑制がなければ大きな意味を持たない。本当に必要なのは整合性のある、人が生態系に与える影響などの環境調査に基づいた数字である。現実的でないという意見を棚に上げてだが、大ナタを振るって既存施設撤去移転、特別保護区域の拡大、意味のない木道やアスファルト登山道の廃止、撤去など環境先進国並にやれないものだろうか。いまだ分散利用を訴える程度の対症療法が柱では本当は困りものだ。


明るく、整備された? 登山道。北海道樽前山にて

利尻岳頂上直下の登山道は、激しい浸食で巨大なミゾを歩く



東京の高尾です。低山の知らない所にも素晴らしい滝の景観が

 現実味がないとすれば、登山者の側で何か行動を興すことは出来ないだろうか。考えられることのひとつは、登山愛好者の登山に対する指向性(志向)を変える努力をすることではないだろうか?


 すぐれた山岳観光地や、百名山ばかりが山ではない。導標もない不遇な山、まっさらで爽快、そして美しい景色、混雑とは無縁の静寂、旨い現地食材、自由闊達に振る舞える遊興の山、そんな山を皆それぞれが探したらどうか。「自分だけの山を探す」不遇な山をである。百名山よりもいかに面白いかを知らしめようではないか。雑誌でも過去、マイナー名山とか「脱!登山道、静かな山入門」を特集した号は人気だった。不便な山は面白いんである。自然とは天地間のありのままの万物をいう。そんな自然に遊ぶ嬉しさは心身共に解放される心地よさだ。人工物は一切ない、そんな気分の良い場所での一時は至福の時間である。




階段をずっと歩くのも登山道保護のため仕方がない?屋久島で

 山の不便を、または不便な山を楽しむ登山の復権とは、登山者のスキルを向上させるためにも役立ち、独自の創造力を反映させる登山として正統的登山の発達にも寄与することに繋がっていく。そして登山用具の復権にもなる。不便な山には小屋も少なくサービスもない。必然的に生活一斉の用具がいる。登山業界も元気になる。ロッククライミングや沢登りもさらに広げる活動も良い。より楽しめる登山という認識が高まること請け合いである。




湿地や谷地の木道はおなじみだが、生態系に及ぼす影響は?巻機山にて

 それすらも見いだせなくなったら山は破滅のベクトルに導かれる。物質文明の頂点に達した今こそ人類の英知を集結して、自然をこれ以上痛めつけない発想、努力、思想で、自然と共生しつつ、素晴らしい山々を残していく道が、われわれ登山愛好家がしなければならないのは、自然に対し遊ばせた貰った恩返しである。









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